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診療内容

後脛骨筋腱炎

後脛骨筋腱は足を支える重要な構造のひとつで、体重をかけた時に足を安定させたり、歩行機能を助けたりしています。
怪我や、長期にわたる腱への負荷によって炎症を起こすのが後脛骨筋腱炎で、大人になってから発症する後天性偏平足の最も大きな原因となっています。
多くの場合は片足だけに起きることが多いですが、両足に発症する人もいます。
また、後脛骨筋腱炎は進行性の障害であり、早期に治療しないと悪化し続けます。

原因

最も大きな原因は、後脛骨筋腱の使いすぎです。
ランニング、歩行、ハイキング、ジャンプなどの動作、バスケットボール、テニス、サッカーなどの衝撃が大きいスポーツで腱を長期に繰り返し使うことで、腱が引っ張られて伸びてしまったり、断裂したりして痛みなどの症状が起きます。
転倒などの怪我でも後脛骨筋腱が断裂したり炎症を起こしたりします。
後脛骨筋腱が断裂したり炎症を起こすと、足のアーチはゆっくりと沈んでいきます。
女性、そして年齢が40歳以上の方に最も多くみられます。他のリスク要因としては、肥満、糖尿病、高血圧などがあります。

症状

症状には痛み、腫れ、足のアーチの沈み(偏平化)、足首の内側への回転などがありますが、状態が進行するにつれ、症状は変化します。
例えば発症の初期には足や足首の内部(腱に沿った箇所)に痛みがあり、その部分に発赤、熱感、腫れなどがみられます。
痛みは運動することで悪化します。 ランニングなどの激しい運動や衝撃の強い運動は非常に困難になります。 長時間の歩行や立位で痛みを訴える人もいます。
その後、足のアーチが平たくなっていき、足と足首の内部にはまだ痛みがありますが、足と足趾は外側を向き始め、足首は内側に回転しています。
症状がもっと進行すると、アーチは更に平たくなり、痛みは足の外部、足首の下に移行することが多くみられます。 腱の状態はかなり悪化し、足部に関節炎を起こすようになります。より重症なケースでは、関節炎が足首に発症することもあります。

診断方法

担当医はまず、既往歴を聞き取り、症状について質問します。
そして足と足首の検査で、以下のような徴候が無いかをチェックします:

  • 後脛骨筋腱に沿った部分の腫脹(下肢から足・足首の内部にかけた部分の腫れ)。
  • 足の形の変化。踵が外側に傾いて、アーチが崩れている。
  • 「足趾が増えたように見える」徴候。正常な足は後ろから確認すると第5趾(小指)と第4趾の半分しか見えないが、偏平足があるともっと多くの足趾が見える。
  • 柔軟性の限界: 担当医は足を左右に動かして柔軟性を確かめます。後脛骨筋腱炎の治療プランはこの柔軟性によって変わります。足が全く左右に動かなかったり、限界があったりする場合は、普通に動く足とは違う治療が必要です。
  • 足首の可動域に問題: 偏平足になると足首を上に向けて曲げることが困難になります。

画像診断

診断を確かなものにするために、画像診断を行う場合もあります。

レントゲン検査
骨など、粗密構造の詳細な画像を撮ることができ、関節炎の探知に有効です。外科手術が必要な場合、どの方法が一番良いかを判断するのに役立ちます。

MRI検査
腱や筋肉といった軟部組織の画像を撮ることができます。診断に疑いがある場合にMRI検査を実施します。

CTスキャン
レントゲンよりもより詳細な画像を撮ることができます。後足部の関節炎は後脛骨筋腱炎に似ているので、関節炎を確認するためにCTスキャンを実施します。

エコー検査
超音波を足にあてて、その反射を画像化することで足の内部の状態を確認します。骨と組織の画像化が可能です。診断により多くの情報が必要と思われた時、後脛骨筋腱のエコー検査を実施します。

治療方法(非外科的治療)

ほとんどの患者様の症状は適切な非外科的治療によって緩和することができます。
早期に治療を開始しても、痛みは3か月以上続くことがあります。
治療せずに何か月も痛みを放置していた場合、痛みが治療開始後6か月以上続くことも珍しくありません。

安静
痛みを悪化させる運動の量を減らしたり、完全に中止することが最初のステップです。
衝撃の少ない運動に切り替えることも有効です。 自転車、エリプティカルマシン(クロストレーナー)、水泳などは足に大きな衝撃を与えず、ほとんどの患者様が耐えられる運動です。

冷却
後脛骨筋腱の痛みがある部分にアイスパックを1回につき20分あてることを1日3~4回実施して、腫れを抑えます。アイスパックはタオルなどでくるみ、直接皮膚にあてないようにします。
運動後ただちに行うと、腱周囲の炎症低減に役立ちます。

非ステロイド性抗炎症薬
イブプロフェンなどの薬を服用して痛みと炎症を低減します。運動の30分ほど前に服用すると、腱周囲の炎症をある程度防ぐことが可能です。腱の肥厚は状態の悪化を意味しますが、これは薬で止めることができません。薬の服用が1か月以上続いている場合は、医師にご相談ください。

固定
短い下肢ギプスや固定ブーツを6~8週間着用して、腱を安静にし、腫れを低減させます。
ただし、この方法では下肢の他の筋肉も委縮(筋力低下)させてしまうため、他の治療法で効果が無い場合のみ実施します。

インソール
ほとんどの患者様に有効なのがインソールとブレース(支持器具)です。
インソールは偏平足の非外科的治療で最も広く行われています。
変形の度合いが低い患者様では市販のインソールを使うことも可能ですが、足が中度から重度に変形している場合はカスタムメイドのインソールが必要です。
カスタムメイドは市販のものより値段が高くなりますが、足の形をより良くコントロールしてくれます。

ブレース
足首ブレースは低度から中度の偏平足に有効です。これは後足部の関節をサポートして、腱の緊張を緩和してくれます。関節炎を起こしているような重度の偏平足にはカスタム成型したブレースが必要になります。
患者様によってはブレースで外科手術を回避できる場合もあります。

理学療法
後脛骨筋腱の病状が低度から中度の患者様には、理学療法による腱の強化が有効な場合もあります。

ステロイド注射
腱周囲にコルチゾンという非常に強い抗炎症薬を注射する場合もありますが、腱断裂のリスクなどがあるため余り頻繁には行われません。注射を受ける前には担当医とそのリスクについてご相談ください。

治療方法(外科的治療)

適切な治療を6か月以上続けても痛みに改善が見られない場合にのみ、外科手術を検討します。手術の種類は腱の炎症箇所と、ダメージの度合いによって異なります。
一般的な外科手術には以下のような方法があります。術後に追加で手術が必要になる場合もあります。

腓腹筋後退術またはアキレス腱延長術
外科的にふくらはぎの筋肉を伸ばして、足首を上に曲げることを可能にします。
これは偏平足の再発予防になりますが、足の蹴り出しや階段を上る力が若干弱くなることもあります。
発症率は低いですが、合併症の可能性として神経ダメージや筋肉の脆弱などがあります。
偏平足の治療法としては他の手術と合わせて行われるのが一般的です。

腱鞘切除術(腱の掃除)
病状が低度で、足の変形が無く、腱の痛みと腫れがある場合に実施します。
腱の周りにある炎症組織(腱鞘)を除去してきれいに掃除します。
考えられるリスクは、腱の継続的悪化、痛みの再発などがあります。

腱移行術
柔軟性に問題がない偏平足において、ダメージを受けた後脛骨筋腱の機能を再生させるために実施します。
この手術ではダメージを受けた後脛骨筋腱を除去して、足部にある他の腱で置き換えます。
後脛骨筋腱のダメージが大きくない場合は、持ってきた他の腱を、残した後脛骨筋腱につなぐ場合もあります。
移行した腱が後脛骨筋腱の代替になるからといって、足部はまだ正常ではなく、人によっては走ったり、競技スポーツに戻れないこともあります。

骨切り術
柔軟性に問題が無い偏平足の形を骨切りによって変化させ、より正常なアーチの形を作ります。骨切りは1か所か2か所必要で、踵骨で行われることが多いです。
偏平足が重度の場合は、骨移植が必要な場合もあります。骨移植によって足外側の長さを伸ばします。

関節固定術
偏平足が硬く、柔軟性に問題があったり、後足部に関節炎がある場合は、骨切や腱移行で治すことができないため、関節固定術によって足の整列を正常にし、関節炎を除去します。この手術を行うと、時間の経過とともに関節がくっつき、関節のない一つの大きな骨に変化します。それによって関節の痛みが無くなります。治癒までの期間はスクリューや金属プレートで骨を固定します。
術後、足の左右の動きが無くなるので、この手術が必要な患者様の歩行は改善します。足の整列も改善しますので足首外側の痛みもなくなります。足首の前後の動きにはあまり影響がありません。他の全ての固定術と同様、骨がくっつかないという可能性もあります。その場合は再手術が必要です。

合併症
合併症で最も多くみられるのは、痛みが完全に無くならないことです。骨切術及び固定術においては非癒合(骨がくっつかない)の可能性もあります。手術によってできた傷の感染も、考えられる合併症の一つです。

予防

後脛骨筋腱炎の予防方法には以下のようなものがあります。
  • スポーツなどの運動前後にウォームアップやストレッチを行う。
  • 下肢の筋肉強化
  • 足のアーチを支えるインソールの使用
後脛骨筋腱炎を予防するには足をしっかりと保護しなくてはいけません。
足にフィットした靴を着用し、その靴底は滑らない素材でできていることが大切で、また靴の中には専門医に処方されたインソールを入れることをお勧めします。

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